脳神経内科
Cranial nerve internal medicine
特に以下のような症状に対して対応可能です。その他の症状に関しても対応させていただきますので、ご相談ください。
脳梗塞とは脳の血管が目詰まりを起こし、詰まった血管が栄養している脳の部位が虚血(血液が足りない状態)→壊死(脳細胞が死んだ状態)を起こすことで症状が出現する病気のことです。
虚血状態になることで一時的に症状が出現するも、結果的に血管に目詰まりを起こさず、症状が改善する病気を『一過性脳虚血発作』と言います。いわゆる脳梗塞の一歩手前の状態です。
脳梗塞には種類があります。まず、 糖尿病・脂質異常症・高血圧症といった生活習慣病からくる動脈硬化が原因で、血管が徐々に細くなり目詰まりを起こすものを『アテローム血栓性脳梗塞』といいます。また心臓の機能が悪かったり、心房細動といった不整脈があったりすると、心臓の中で血がよどむことにより血の塊(血栓)ができて、それが飛ぶことにより目詰まりを起こすものを『心原性脳塞栓症』といいます。他にも稀ですが、自己免疫疾患や膠原病が原因で起こす脳梗塞もあります。症状に関しては脳梗塞を起こす部位により異なります。視野の一部が欠けたり、顔や手足に麻痺が出たり、言葉が出なくなったり、言葉が理解できなかったり、呂律が回らなかったり、飲み込みが悪くなったり、などと様々な神経症状が出現します。それぞれの脳梗塞で原因が異なるため、予防薬や治療方法が変わります。検査を行い、病型を判断することが重要となります。症状が出た方、脳梗塞の通院加療で近医をお探しの方もぜひご相談ください。
脳出血とは脳内の血管が何らかの原因で破れ、脳の中で出血した状態をいいます。当院では頭部CTがあるため、その日の内に結果がわかります。症状としては頭痛や吐き気、また脳梗塞と同様で出血した部位によって異なる神経症状が出ます(①をご参照ください)。
当院では頭痛の性状の詳しい問診からどの頭痛に分類されるか判断し、緊急疾患を頭部CTにて確認することが可能です。治療に関しては患者さんの状態に応じて、点滴や内服での加療で対応いたします。ひどい頭痛で日常生活に支障をきたす方も多くいらっしゃいます。気になる頭痛をお持ちの方はお気軽にご相談ください。
認知症の中で最も多く全体の6割を占めます。症状としては短期記憶障害、判断能力の低下、見当識障害が出現します。短期記憶障害とはいわゆる物忘れから始まり、何度も同じことを繰り返し聞く、食事をしたことを忘れてしまうといった症状が出現します。判断力の低下が進行すると、料理の手順がわからない、片付けができない等の症状が出現します。見当識障害はまず日付などがわからなくなり、進行するとトイレの位置などが分からなくなります。さらに認知症の周辺症状といわれる行動・心理症状(BPSD)があります。易怒性(怒りっぽくなる)、ものを盗られたといって家族を責める『物盗られ妄想』、本人のなんらかの目的で外に出て迷子になってしまう症状、入浴をしない等の『介護拒否』などが出ます。
周辺症状に関しては特に介護をされるご家族が困る症状です。当院では頭部CTを行い、必要に応じて他院にて頭部MRI、脳血流検査を行うことで診断をし、抗認知症薬で進行を緩やかにし、周辺症状に対しても抗認知症薬の使い分けや抗精神病薬などを使用することで自宅や施設での生活を送れるようにサポートします。軽度の物忘れから認知症状の強い方まで対応できますので、どうぞご相談ください。
脳の中脳と呼ばれる場所に黒質という部位があります。この部位の細胞が減ってしまうために引き起こる病気です。神経の伝達物質であるドパミンがこの細胞の変性により減少することで、運動の調節が行われなくなり、体の動きが不自由になります。典型的な症状としては動きが鈍くなる『無動』、筋肉がこわばる『筋固縮』、安静時の手のふるえ『振戦』、転びやすくなる『姿勢反射障害』が代表的なものとしてあります。
日本では15万人程度患者さんがいると言われており、比較的多い疾患と考えられております。他の症状としては顔の表情が乏しくなる『仮面様顔貌』、臭いが鈍感になる『嗅覚低下』といった症状が出ます。うつ症状や不安症状が出現することも多い疾患です。臨床症状から判断し、MIBG心筋シンチグラフィーやDAT Scanといった検査を行うことで確定診断を行うことが可能です。運動症状が顕著になると日常生活に支障を大きくきたす疾患であり、ドパミンというホルモンを補充する治療が主体となります。適切な内服加療を行うことで、運動機能を維持することが可能です。また、中等度以上の重症度では難病に指定されている疾患であり、当院で申請は書類を作成することが可能です。症状があり、パーキンソン病が気になる方、内服の調節を相談したい方はぜひお越しください。
全国で約4万人の患者さんがいると言われています。遺伝によるものが30%程度、遺伝に関係なく病気になる孤発性が70%程度と言われています。いろいろなタイプがあり、それぞれ特徴的な臨床症状を呈すると言われています。脳の小脳と言われる部位にある細胞が変性することで起こる病気です。
前述の通り、小脳は運動機能の調節、体の動きを記憶、大脳の思考をコピーして保持するという機能が備わっている部分です。この部位に障害が起こると呂律が回らなくなり、言葉が途切れ途切れに出る『断綴言語』、足の運びがうまくできず、バランスが悪くなって歩けなくなる『小脳失調性歩行』、目標物に手などが到達できない『測定障害』が認められます。遺伝子のタイプによって症状が他にも出現することもあります。難病にも指定されている病気です。現在の医学では根治治療は難しい病気ですが、『セレジスト©』を内服することで小脳失調症状を緩和させることができます。これらの症状が疑わしかったり、ご家族にも同様の症状がある方はご相談ください。
自分で体を動かす筋肉のことを随意筋といいます。この随意筋をコントロールする神経のことを運動ニューロン(神経細胞)といいます。運動ニューロンは、いろいろな動作をするときに、脳の命令を筋肉に伝える役目をしています。この運動ニューロンが障害され、信号が伝わらなくなることで、筋肉が徐々に動かせなり、筋肉がやせ細ってきます。これが筋萎縮性側索硬化症という病気です。
日本では約8300人の患者さんがいると推定され、難病にも指定されている病気です。手足の力が入りにくい、箸が持てない、手足が上がらない、走りにくい、筋肉のぴくつきといった症状が現れます。手・指・足の筋肉が痩せてくるのも特徴的です。人によっては球麻痺症状といって呂律が回らなくなったり、飲み込みの機能が落ちたりします。進行速度には個人差はありますが、徐々に身動きが取れなくなり、呼吸筋の麻痺が起きたり、食事が摂れなくなったりします。現在の医学では根治治療は難しい病気ですが、治療法としてはグルタミン酸という物質による細胞障害が提唱されており、それを抑える『リルテック©』という薬があります。他にフリーラジカルという神経障害を引き起こす物質を消去することで病気の進行を遅らせる『ラジカット©』という点滴での加療があります。早期に診断を行い、ご本人はもちろん、ご本人と関わるご家族とご相談させていただきながら、治療方針と今後の生活の送り方などを相談させていただき、サポートをさせていただきます。
脳から背骨の内側に脊髄という神経の束が通り、そこから細かい神経が分岐して手足や臓器に神経が到達し、私たちの体は動いています。神経の束が通っている部分を脊柱管と言います。
骨や靭帯の肥厚、椎間板の突出などが原因で、この脊柱管という空間が狭くなり、神経が圧迫されて症状が出現する病気のことを言います。脊髄が圧迫されると部分的なしびれや痛み、腰痛などの症状が出現します。当院ではまず脊椎CTにて異常所見の有無を確認し、必要があれば近医でMRIを施行することにより原因の判断を行います。内服薬で脊髄の血液の巡りを良くし、神経性疼痛とよばれるしびれや痛みの症状に対して神経痛用の内薬で加療を行い、症状を緩和することが可能です。程度がひどい場合や力が入らないといった症状が出現した場合には手術やリハビリでの加療が必要となりますので、しかるべき医療機関へご紹介させていただきます。他に、椎間板ヘルニア、黄色靭帯硬化症、滑り症といった病気でも似た症状が起こります。
糖尿病の三大合併症の一つで、長期にわたり糖尿病に罹患されている方に起こる病気です。微小血管が障害されることで、その微小血管が栄養する末梢神経にダメージが起こります。その結果、手足の先にしびれや疼痛が出現する病気です。非常に軽度のものから日常生活に支障をきたすほど重症な方まで人により異なります。糖尿病を患われている期間が長かったり、血糖のコントロールが悪かったりすると症状がひどくなる傾向があります。まずは糖尿病のコントロールを行うことが先決で、症状に対しては糖尿病性末梢神経障害に対する疼痛・しびれに使用する薬剤を用いることで緩和することが可能です。ぜひご相談ください。
稀に風邪や下痢などの感染を契機に自分の神経に対する抗体という物質ができることで発症します。抗体というのは体の中の認識物質のことです。通常は細菌やウイルスなどの外部の侵入者に対して抗体がつくことで、細菌やウイルスを退治する細胞がこの抗体を認識して攻撃をします。これを自己免疫応答といいます。この病気の場合、神経に対する抗体『抗ガングリオシド抗体』が作られ、これが神経につくことで誤認され、自分の神経が壊されてしまうために症状が出現します。通常感染後から1~4週間程度で発症し、症状としてはしびれが多く、指先から始まり、手袋や靴下を履く部分に一致してしびれが広がり、手足の力が徐々に入らなくなります。1~2週間程度で症状のピークとなります。重症化すると呼吸筋の麻痺や自律神経障害で突然状態が悪化することもあり、早期の診断と適切な治療が重要となります。
神経というのは脳からの刺激が流れる電線だと考えてください。自己免疫応答によりこの電線に炎症が起こり、脳からの刺激が通らなくなることで、症状が出現する病気です。特異的な抗体は現在発見されておりません。10万に1~2名と非常に珍しく、難病にも指定されている病気です。症状としては手足の筋力の低下としびれが出ます。大量免疫グロブリン療法などの治療方法があります。
顔面神経麻痺のうち原因が明らかでないものをベル麻痺(特発性末梢性顔面神経麻痺)と言います。原因として多いといわれているのが、疲労や免疫力低下、ストレスなどをきっかけに、以前より感染していた単純ヘルペスウイルスのウイルス量が増えること(再活性化)です。症状としては片側のまぶたが閉じられない、片側の口元から水がこぼれる、片側の口の先が下に下がる、味がわからない、などがあります。
脳梗塞などとの鑑別が必要であり、臨床症状や画像診断で判断します。治療方法としては抗ウイルス薬やステロイド、ビタミン剤などで治療が可能です。治療はあくまで進行を止める治療であり、すでに起こってしまった麻痺に対してはリハビリが非常に重要です。リハビリをしても麻痺が残る場合があります。当院では自宅でできるリハビリの説明書をお渡しいたします。発症してから受診と治療までの時間が早ければ早いほど、回復の程度に影響してきます。あれ?変だなと思った際にはぜひご相談ください。
力が入らないのは上で記した疾患でも出ますが、筋肉自体の問題で症状が出現する病気があります。筋疾患は様々な疾患があり、鑑別が重要となります。大まかにわけて炎症性筋疾患(多発筋炎、皮膚筋炎、封入体筋炎など)と遺伝性筋疾患(筋ジストロフィーなど)があります。筋炎とは何らかの原因で筋肉に炎症が起こり、壊死することにより、腕や足、臀部といった筋肉に筋力低下や筋痛が出現します。他には関節痛や典型的な皮膚症状が出ることもあります。採血などで検査を行い、確定診断をし、ステロイドや免疫抑制剤で治療を行います。
右効きの方の場合、左側の脳に言語の中枢が存在します。ブロカー野、ウェルニッケ野と呼ばれる部位で、前者はことばを話したり、字を書いたりする機能が備わっており、後者はことばを理解する機能が備わっています。この部位が上記疾患等で障害を受けると症状が出現します。
神経と筋肉が接する部分(神経筋接合部)では、アセチルコリンという物質が神経の端から筋肉に向けて放出されます。これにより私たちは脳からの命令を筋肉に伝え、体の筋肉を動かしています。
重症筋無力症は、アセチルコリンを受け取る受容体(受け皿に当たる部分)の働きを妨げる抗体(抗アセチルコリン受容体抗体)が体内で作られることで、受容体の機能が働かず、脳からの命令が筋肉に伝わりにくくなる病気です。他にも筋特異的受容体型チロシンキナーゼに対する抗体もあります。重症筋無力症の症状としては、連続して手足を動かすと筋肉がすぐに疲れて、力が入りにくくなります。また、まぶたが下がってくる眼瞼下垂と、ものが二重に見える複視などの眼の症状を起こしやすい特徴があります。採血で検査をして抗体を発見することで診断を行うことができます。まれに両方の抗体が陰性である方もいらっしゃり、筋電図などの検査や臨床症状で診断をして治療を行います。難病にも指定されている病気です。抗コリンエステラーゼ阻害薬やステロイド、免疫抑制剤といった薬を使用し治療を行ないます。
通常、脳の情報は、神経細胞を通じて、体全体へと伝えられています。脳の情報を伝える電線のような働きをするのが、軸索と言われるものです。これは神経細胞の一部が突起のように長く伸びたもののことを指します。また、軸索は髄鞘という電線のカバーのようなもので覆われていて、この髄鞘により、我々は脳の情報をスムーズに伝えることができるのです。多発性硬化症は何らかの原因で、この髄鞘が障害(脱髄と言います)されることで、情報がスムーズに伝わらなくなり、様々な症状が出ます。病気の部位としては脳の至るところや背骨の中を通っている神経の束である脊髄と呼ばれる部位にこの脱髄の病変が出現します。病気の部位によりしびれや手足の動かしにくさが出たり、感覚がわからなくなったり、眼球の動きが悪くなったり、複視(ものが二重に見える)が出たり、尿が出なくなったり、便意が出なかったりなどと様々な症状が出現する病気です。難病にも指定されている病気です。検査としては頭部MRI、脊髄MRI、腰椎穿刺といった様々な検査が必要になります。また、急性期の治療には入院が必要であることが多いです。診断がつけば、適切な医療機関へご紹介させていただきますので、ご相談に来ていただければと思います。